今回は、不動産登記の実例にもとづいて、所有権移転請求権仮登記の抹消についての訴訟手続と登記手続について述べます。
X:上記所有権移転請求権仮登記を抹消したい。
Bは、既に死亡。Bの相続人は、C・D・E。
代物弁済予約時の事情を知るものは居ない。
X:C・D・Eを共同被告として、令和8年7月10日に上記仮登記の抹消登記手続請求訴訟を提起。請求原因は①X所有、②C・D・E仮登記保持。物権的妨害排除請求として抹消登記を求めた。
C・Dからは答弁書が出なかったが、Eから、「抹消には異議がないが、訴訟費用の負担は許してくれ」、との趣旨の答弁書が出た。
Eから答弁書が出たので、裁判所は職権でこれを調停に付した上で、令和8年6月11日に調停に代わる決定で請求を認めた。この調停は地裁で行う。
代物弁済予約の事情が分からないので、①所有権の存在、②妨害の存在の2点のみを請求原因とした。要件事実論としては、これで十分である。
XがC・D・Eに代位して行う。
(1)登記原因: 昭和57年7月27日相続
(2)代位原因: 令和8年6月11日調停に代わる決定の所有権移転請求権仮登記抹消登記請求権
*代位原因の日付について
代位原因の日付は、決定が共同被告に対し最後の者に送達された日の翌日から起算して2週間が経過した日になる。
最後に送達された日は原告には分からないから、確定証明申請書には「御庁が令和8年5月20日にした調停に代わる決定が令和8年(空欄)月(空欄)日に確定したことを証明してください。」と記載し、裁判所が同所に記載してくれた日付をそのまま書けばよい。その日付の「翌日」になるのではない。
*調停に代わる決定(民事調停法17条)
民事調停において両当事者の合意が調わず調停が成立する見込みがない場合、裁判所が職権で「調停に代わる決定」行うことができる。これを「調停に代わる決定」とか「17条決定」という。
決定の内容に納得できないという時は、17条決定に対し、2週間以内に異議を申し立てることができる。この期限を徒過すると、異議申立は却下される。期限内に異議申立を行うと、その時点で調停は終了する。調停が再開されるのではない。従って、なお異議があれば、別途、訴訟を起こさねばならない。訴訟事件が職権により調停に付された場合(付調停事件)は訴訟に戻る。訴訟提起については、上記期限内に手続を進めることで、時効や手数料の面で有利になる。
*家事調停法284条
同様の制度は、家事調停にもある(家事調停法284条)。
令和8年6月11日調停に代わる決定
訴訟費用とは、裁判所へ支払う実費手数料をいう。誤解している人が多いようであるが、弁護士の着手金や報酬は含まれない。もしそのようなものが含まれ敗訴者の負担とされるようなことがあると、大企業相手にはおいそれと訴訟を提起することができなくなる。
訴訟費用として通常見かけられるのは、訴訟提起の際の印紙代と送達費用としての予納郵券代である。その他、証人や鑑定人の旅費・日当・宿泊費などもある。
印紙代の額は法定されているが、予納郵券の額や切手の種類の組み合わせ方は裁判所によって異なるので、あらかじめ裁判所に聞いておくのがよい。
判決において、訴訟費用として「訴訟費用は、原告が〇分の〇、被告が〇分の〇の割合で負担とする。」と定められることが多い。これは割合を示しているだけで、具体的な金額を示すものではない。具体的な金額を定めるには、別途、「訴訟費用額の確定処分の申立」をしなければならない。これは債務名義の執行力が生じたのちに、書面で行う。判決の確定後に行うことが多い。もっとも、訴訟費用は各自の負担として、相手方に請求しないことも多い。
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